Review Article
抗老化医学:細胞老化とセノリティクス ─ 臨床への道
Nature Medicine 28, 8 doi: 10.1038/s41591-022-01923-y
基本的な老化過程は相互につながりあっていて、多くの不調や疾患を促進する根本原因であるように見える。そのような過程の1つは細胞の老化であり、これにより有害な刺激に応答して細胞周期が停止した状態が引き起こされる。老化細胞は一生の間ずっと生じる可能性があり、老化細胞が生き残り続けるようなら、それらが分泌する多数のタンパク質によって組織機能が有害な影響を受けかねない。前臨床モデルでは、存在し続けて組織損傷の原因となるこのような老化細胞を標的とする介入は、さまざまな不調を遅らせたり、防止したり、軽減したりすることが報告されている。この考え方に沿って、老化細胞を選択的に排除する小分子セノリティクス(老化細胞除去薬)が見つかったことは、ヒトの多数の疾患や老化に関連する症状の予防や治療のための有望な戦略につながった。本総説では、一生を通して老化細胞を体調不良や疾患の治療標的とすることの理論的根拠について概説し、小分子セノリティクスなどの老化を標的とする介入手段を臨床での使用に転用する際に最も有望と思われる戦略について、最近結果が出た、あるいは進行中の臨床試験を含めて論じる。