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がん治療:進行性転移性固形腫瘍に対する個別化した異種チンパンジーアデノウイルスと自己増幅型mRNAネオアンチゲンワクチン ─ 第1相試験中間結果

Nature Medicine 28, 8 doi: 10.1038/s41591-022-01937-6

チェックポイント阻害剤(CPI)療法は、免疫反応性の低い腫瘍を持つ患者に対する効果は限定的である。T細胞誘導ワクチンは、CPI療法と組み合わせることで、長期間持続する疾患制御を行うのに有望と考えられている。個別化した異種チンパンジーアデノウイルス(ChAd68)と自己増幅型mRNA(samRNA)をべースとするネオアンチゲンワクチンを、ニボルマブおよびイピリムマブと組み合わせた場合の安全性と耐容性、および第2相試験の推奨用量(RP2D)が、進行性転移性固形腫瘍の患者で現在進行中の第1/2相試験(NCT03639714)で主要評価項目として査定された。個別化ワクチンレジメンは安全で耐容性は高く、用量制限毒性は認められなかった。10%を超えた治療関連有害事象(TRAE)には、発熱、疲労、骨格筋と注射部位の痛み、下痢が含まれていた。発熱、十二指腸炎、トランスアミナーゼの上昇、甲状腺機能亢進症のそれぞれで、重度のTRAEが1回ずつ起こった。ChAd68のRP2Dは、1012個のウイルス粒子(VP)と30 μgのsamRNAだった。副次評価項目には、免疫原性、製造の実現可能性、全生存期間(OS)が含まれていた。ワクチンの製造は実現可能であり、ワクチン接種は長期持続するネオアンチゲン特異的なCD8 T細胞応答を誘導した。また、マイクロサテライト安定性大腸がん(MSS-CRC)の複数の患者で、OSが改善された。バイオマーカーの探索的解析から、OSが延長した患者で循環血中腫瘍DNA(ctDNA)の減少が明らかになった。今回は研究規模が小さいため、統計解析とトランスレーショナル解析に制限があるが、MSS-CRCで観察されたOSの延長は、より大規模な無作為化研究でのさらなる調査研究の必要性を示している。

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