Editorial
患者の安全を守るためには安全基準のイノベーションが必要だ
Nature Medicine 28, 9 doi: 10.1038/s41591-022-02020-w
従来の医薬品には臨床使用の前に安全性を確認する規制や基準が設けられている。しかし近年、細胞治療や遺伝子治療、人工知能(AI)ベースの医療機器など、標準的な研究開発や規制の経路を踏まない治療が行われるようになり、安全基準を広い視野の上に立って見直す必要が生じている。AIや機械学習に基づくモデルは、「医療機器としてのソフトウエア」(SaMD)と定義され、患者に予期せぬ害を与えかねない複雑な介入と考えられている。AIアルゴリズムは、現実世界の集団にさらされると継続的に学習し進化するため、「静的」な介入とは異なる規制をしておかなくてはならない。また、SaMDは現実世界に存在している健康格差やシステム的な偏りを悪化させるリスクもある。AIをはじめとする医療革新における患者の安全の確保は、研究者、規制機関、メーカー、医療従事者、患者などの関与が必要な継続的な課題である。