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白血病:慢性リンパ球性白血病からリヒター症候群への転換の進化履歴
Nature Medicine 29, 1 doi: 10.1038/s41591-022-02113-6
慢性リンパ球性白血病(CLL)から生じるリヒター症候群(RS)は、進行が緩慢な新生物から移行する増殖の速い悪性腫瘍の例である。この形質転換の基盤となる遺伝学的性質を解明するために、RS患者52人のCLL細胞およびRS細胞の混合物をコンピューターでデコンボリュートし、CLL–RSを対とした全エキソーム塩基配列解読データの評価を行った。RSに特異的な体細胞ドライバー変異(IRF2BP2、SRSF1、B2M、DNMT3A、CCND3など)、del(9p21)(CDKN2A/B)以外にも、頻発するコピー数変化、全ゲノム重複、クロモスリプシス(染色体粉砕)が見つかった。これらは互いに無関係な45のRS症例と外部から得られたRS全ゲノムの1セットで確認された。教師なしクラスタリングにより、クローン的に関連があるRSは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは大きく異なっていることが分かった。RSとCLLで調節不全になった経路が区別され、単一細胞分解能で形質転換のクローン進化が検出されたことから、中間的な細胞状態が明らかになった。我々の研究は、RSの分子的に異なるサブタイプを明らかにしており、無細胞DNA解析が早期診断やモニタリングの手段となる可能性が明確になった。