Consensus Statement
糖尿病:糖尿病精密医療の臨床トランスレーションにおける未解決課題と可能性に関する第2回国際コンセンサスレポート
Nature Medicine 29, 10 doi: 10.1038/s41591-023-02502-5
エビデンスに基づく現代医療は、医学的な意思決定や健康に関する推奨事項の誤りを減らし、アウトカムを最適化することを目指すが、その結果、当然の流れとして精密医療が進展してきたといえる。糖尿病は世界中で数億人が罹患しており、その多くが致死的な合併症を発症し、早期に死に至る。一般的な種類の糖尿病に見られる発症機序、病因、臨床症状の不均一性や合併症のリスクを説明することによって、精密医療が目指す大きな問題に対処できる可能性がある。糖尿病の精密医療に関する第2回国際コンセンサスレポートでは、既知の4種類の糖尿病(単一遺伝子性糖尿病、妊娠糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病)における精密医療の主要な柱(予防、診断、治療、予後)について、エビデンスのシステマティックレビューから得られた知見を要約する。これらのレビューは、精密医療の研究を臨床診療にトランスレーションする上での重要な疑問点を扱っている。糖尿病の精密医療に関しては、完全ではないが、膨大な文献があるので、即座の、あるいは近い将来の臨床導入の可能性が高いことが明らかである。一方で、理解が不足している重要な事柄の存在も明らかとなり、臨床に関する新たなエビテンスを得る必要性にも言及している。そうした課題には、費用対効果、健康公平性、予測精度、不利益、利用しやすさの考慮など、臨床導入の準備のために共通の基準の必要などがある。糖尿病の精密医療を広く臨床導入するための重要なマイルストーンについても概説する。