脂肪性肝疾患:エストロゲン受容体αとPNPLA3 p.I148Mバリアントの相互作用が女性の脂肪性肝疾患の感受性を促進する
Nature Medicine 29, 10 doi: 10.1038/s41591-023-02553-8
代謝機能障害によって引き起こされる脂肪性肝疾患(FLD)は肝疾患の主な原因であり、特に女性で罹患率が上昇している。女性は、生殖年齢ではFLDから保護されているが、閉経期に急速に進行するFLDを発症する女性もおり、この理由はいまだ解明されておらず、研究もされていない。PNPLA3(patatin-like phospholipase domain-containing 3)のp.I148Mバリアントは、遺伝性FLDのバリアントの中で最大の割合を占めている。本研究で我々は、FLDリスクのある人(脂肪症や線維症、P < 10−10。進行した線維症/肝細胞がん、P = 0.034)、および一般集団(アラニントランスアミナーゼレベル、P < 10−7)においてFLDを確定する際に、性別が女性であることとPNPLA3 p.I148Mの間に特別な相乗的相互作用があることを示す。肝臓のPNPLA3発現は、肥満者では男性よりも女性の方が高く(P = 0.007)、また、マウスではエストロゲンレベルと相関があった。ヒト肝細胞および肝臓オルガノイドでは、PNPLA3はエストロゲン受容体α(ERα)アゴニストによって誘導された。クロマチン免疫沈降とルシフェラーゼアッセイにより、我々は、PNPLA3エンハンサー内のERα結合部位を特定し、その特性を解き明かした。さらに、CRISPR–Cas9ゲノム編集により、我々は、この塩基配列がPNPLA3 p.I148Mの発現上昇を促進し、星細胞を含む多細胞系譜からなる三次元スフェロイドでの脂肪滴蓄積と線維形成を引き起こすことを実証した。これらのデータは、ERαとPNPLA3 p.I148Mバリアント間の機能的相互作用が女性のFLDの一因であることを示唆するものである。