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研究者たちは生物時計を遅らせようとしているが、老化の生物学的マーカーは依然として見つかっていない
Nature Medicine 29, 11 doi: 10.1038/s41591-023-02560-9
長寿研究には莫大な資金が注ぎ込まれているものの、老化を進める生物学的過程はいまだによく分かっていない。WHOによれば、「老化は、時間経過に伴う多種多様な分子や細胞が受けた損傷の蓄積」であり、その結果、身体的・精神的能力が徐々に低下し、病気のリスクが高まり、最終的には死に至る。最大酸素消費量や筋肉量のような機能的バイオマーカーは、罹患率や死亡率の優れた予測因子だが、分子マーカーの場合は相関的な関係しかない。現在研究されている老化のマーカーには、DNAメチル化に基づく「エピジェネティック・クロック」、ホメオスタシス(恒常性)の動的平衡の変化などがある。DNAのメチル化やRNAの発現など、ゲノムの何十万もの変数を同時に測定し、人工知能(AI)でパターンを探すといった方法も試みられている。太古にヒトゲノムに侵入した内因性レトロウイルス(ERV)も老化に影響を与えている。人間の生物学的年齢を正確に測定する定規が必要だが、現在の老化の科学はまだそれに追い付いていない。