Brief Communication
自己免疫疾患:TRBV9+ T細胞を標的にして除去する強直性脊椎炎患者の免疫療法
Nature Medicine 29, 11 doi: 10.1038/s41591-023-02613-z
自己免疫は、自己抗原を不適切に標的とする記憶T細胞や記憶B細胞のクローンによって内因的に誘導される。自己反応性T細胞の選択的な除去や抑制は自己免疫の治療における究極の目標であるが、疾患に関連するT細胞受容体(TCR)やコグネイトな抗原エピトープは明らかになっていない。近年、TRBV9を含むCD8+ TCRモチーフが強直性脊椎炎や乾癬性関節炎、急性前部ぶどう膜炎の病因と関連付けられており、またコグネイトなHLA-B*27によって提示されるエピトープが見つかっている。非ヒト霊長類モデルでの試験成功を受けて、今回我々は、強直性脊椎炎におけるヒトTRBV9+ T細胞除去について報告する。患者は3カ月以内に寛解に達し、抗TNF治療は5年間の連続実施の後、中止した。完全寛解は現在も4年間持続しており、抗TRBV9を年に3回投与している。また、脊椎可動性の測定値やBASMI(Bath Ankylosing Spondylitis Metrology Index)に大きな改善が観察された。このことは、TRBVで定義されるT細胞グループの選択的な除去によって、自己免疫疾患の根治的な治療が可能であることを示している。この抗TRBV9抗体療法は、HLA-B*27に関連する他の脊椎関節炎疾患にも適用可能であると考えられる。このように、全身的な免疫抑制を行うことなく、疾患の根本原因を標的化して除去することは、自己免疫に対する安全かつ有効な新世代の治療法になる可能性がある。