Article

胸腺がん:胸腺の変化と免疫チェックポイント阻害剤関連心筋炎に対する感受性

Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02591-2

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、腫瘍学における治療の状況を一変させた。しかしICIは、まれではあるが、自己反応性T細胞を介した致死的な筋毒性である心筋炎や筋炎を引き起こす可能性がある。胸腺はT細胞の成熟に重要な役割を担っている。今回我々は、胸腺に見られる変化がICI筋毒性の発生率や重症度の増加と関連していることを示す。まず、国際医薬品安全性監視データベースであるVigiBaseや、フランスのパリ公立病院連合–ソルボンヌ大学のデータウェアハウス、臨床試験のメタ解析を用いて、胸腺上皮性腫瘍(TET、特に胸腺腫)でのICI療法は、ICIで治療した他のがんよりも、ICI筋毒性を伴う頻度が高かったことを示す。次に、国際ICI心筋炎レジストリにおいて、TET患者(活動性のTETや既往のTETを含む)では、他のがんと比較して、ICI開始後に心筋炎がより早期に発生することや、呼吸筋不全や死亡につながる致死的な不整脈や随伴する筋炎という点でより重症であることを明らかにした。最後に、抗アセチルコリン受容体抗体の存在(胸腺関連自己免疫の生物学的指標の1つ)は、ICI療法を受けた対照患者よりもICI心筋炎患者で多く認められたことを示す。このように我々の結果によって、胸腺の変化がICIによる筋毒性の発生率や重症度に関連していることが明らかになった。胸腺を評価する臨床的、放射線学的、生物学的な精密検査が、ICIによる筋毒性の予測に役立つと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度