子宮頸がん:一般集団の女性を対象とした子宮頸がんのスクリーニング、トリアージ、治療戦略の有益性、有害性、費用対効果
Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02600-4
2020年、世界保健機関(WHO)は、公衆衛生における課題として、子宮頸がんを根絶する戦略を開始した。この戦略を支援するために、WHOは子宮頸がんスクリーニングガイドラインの最新版を2021年に発表した。この最新版ガイドラインに情報を提供するために、我々は、確立されたモデル化プラットフォームであるPolicy1-Cervixを用いて、78の低・中所得国(LMIC)の一般集団の女性を対象に、7種類の一次スクリーニングシナリオの効果を評価した。スクリーニング受診率を70%と仮定すると、一次スクリーニングとしては、ヒトパピローマウイルス(HPV)の検査が最も効果的かつ費用対効果が高く、5年ごとに受診すると子宮頸がんの年齢調整死亡率が63~67%減少することが分かった。治療前に女性のトリアージ(HPV 16/18の遺伝子型検査、細胞診、酢酸による頸部視診〔VIA〕または膣鏡診)を組み入れる戦略の有効性は、トリアージなしのHPV検査によるスクリーニングとほぼ同様であり、前がん病変の治療数を減少させた。3年ごとのVIAまたは細胞診によるスクリーニングは、 5年ごとのHPV検査によるスクリーニングよりも、効果が小さく、費用対効果も低かった。また、スクリーニングにVIAを用いる場合は、HPV検査を用いる場合よりも、前がん病変の治療数が2倍以上多かった。結論として、一次スクリーニングとしてのHPV検査は、LMICにおいて最も効果的で、費用対効果が高く、効率的な子宮頸がんスクリーニングの選択肢である。WHOは、「スクリーニング・治療」または「スクリーニング・トリアージ・治療」の取り組みにおいて、一般集団の女性を対象とした一次スクリーニングとして、HPV検査を30歳から始め、その後5年あるいは10年ごとに検査を受けることを推奨している。本研究で得られた知見は、WHOの子宮頸がんスクリーニングガイドラインの最新版に直接情報を提供するものである。