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HIV:抑制不能なHIV-1ウイルス血症におけるウイルス側と宿主側のメディエーター

Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02611-1

抑制不能なHIV-1ウイルス血症(NSV)は、抗レトロウイルス療法(ART)における服薬アドヒアランスの不良や明らかな薬物抵抗性の証拠がないにもかかわらず、ART治療中に持続する低レベルのウイルス血症として定義される。NSVの背後にある機構を明らかにすることで、HIV-1の持続性についての理解が深まると考えられる。今回我々は、ART治療中の8人のNSV患者(男性88%)で血漿中のウイルスの塩基配列を解析し、患者の縦断的な検体のウイルス塩基配列は、長い間進化した形跡のない大きなクローンで構成されていることを示す。我々は、血漿のHIV-1 RNA塩基配列と一致するプロウイルスを「プロデューサープロウイルス」、一致しないものを「非プロデューサープロウイルス」と定義した。抑制不能なウイルス血症は、プロデューサープロウイルスの増殖したクローンから生じており、このクローンは、ARTが抑制されている人の無傷なゲノムのプロウイルスリザーバーよりも顕著に大きかった。プロデューサープロウイルスの挿入部位は、H3K36me3による活性化エピジェネティック標識の近傍に多く存在していた。NSVを示す被験者由来のCD4+ T細胞では、抗アポトーシス遺伝子の発現上昇と、アポトーシス誘導経路やI/II型インターフェロン関連経路の発現低下が見られた。また、NSVの被験者では、同様のウイルス量を示す未治療のウイルス血症対照者と比較して、HIV特異的CD8+ T細胞応答が顕著に低下していた。我々は、HIV-1の持続性を打破するための標的となり得る、宿主側とウイルス側のNSVの重要な潜在的メディエーターを明らかにした。

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