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変形性膝関節症:変形性膝関節症の膝痛治療についての細胞注射とコルチコステロイド注射の比較 ― 無作為化第3相試験

Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02632-w

変形性膝関節症患者の治療選択肢として、さまざまなタイプの細胞を注入する方法が、費用はかかるが一般的になってきている。しかしながら、それぞれの細胞注射やコルチコステロイド注射の相対的な有効性を明らかにした文献は少ない。本論文では、自家骨髄穿刺濃縮液、自家脂肪組織由来間質血管細胞群、同種ヒト臍帯組織由来間葉系間質細胞といった細胞製剤注射の安全性と有効性を、コルチコステロイド注射(CSI)との比較において確認することを目指した。この臨床試験は、変形性膝関節症(ケルグレンローレンス(KL)分類でグレード2~4)と診断された480人の患者を対象とした、第2/3相併用、4試験群並行、多施設、単盲検、無作為化、比較対照臨床試験である。参加者は試験群ごとに、細胞注射グループとCSI注射グループに3:1で無作為に割り付けられた。すなわち、第1群は自家骨髄穿刺濃縮液(n = 120)、CSI(n = 40)、第2群は臍帯組織由来間葉系間質細胞(n = 120)、CSI(n = 40)、第3群は間質血管細胞群(n = 120)、CSI(n = 40)である。2つの主要評価項目は、ベースライン(試験開始時のスコア)に対する、12カ月後の視覚的アナログ評価による疼痛スコアとKOOS(Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score)による疼痛スコアであった。440人の患者を対象に主要評価項目について解析したところ、注射後1年の時点で3種の整形外科用生物製剤(オルソバイオロジクス)注射のいずれもが、他のいかなる製剤、そして対照であるCSIと比べて優れているとは言えないことが判明した。また、4試験群ではいずれの場合も、ベースラインと比較して、MRI検査で判明する変形性関節症重症度スコアに有意な変化は見られなかった。臨床試験期間中、手法に関連した重篤な有害事象は報告されなかった。まとめると今回の試験は、注射後1年の時点では、上記の整形外科用生物製剤で変形性膝関節症に対する治療としてCSIに勝るものは認められなかったことを示している。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT03818737。

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