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マラリア:アフリカにおける薬剤耐性および難診断性マラリアの拡散にステフェンスハマダラカが役割を果たしている科学的根拠
Nature Medicine 29, 12 doi: 10.1038/s41591-023-02641-9
アジアのマラリア媒介者であるステフェンスハマダラカ(Anopheles stephensi)は、アフリカ全土に広がり続けている。この媒介者は現在、「アフリカの角」の都市環境に安定的に定着している。マラリアが再興した地域にこの蚊が存在していることは、この蚊がマラリア集団発生の原因に役割を果たしている可能性を示唆している。我々は前向き症例対照研究を設計し、2022年4月から7月にかけて、エチオピアのディレ・ダワでのマラリア集団発生後のマラリア伝播におけるステフェンスハマダラカの役割について調査した。マラリア患者と発熱のある対照群の接触者をスクリーニングしたところ、マラリア患者の周囲での熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の空間的クラスター化は、住居周辺のステフェンスハマダラカの存在と強く関連していることが明らかになった。また、これらの蚊ではマラリア原虫のスポロゾイトが検出された。今回のマラリア集団発生には、アルテミシニン耐性や難診断性の分子シグネチャーを持つ寄生虫のクローン増殖が関与していた。本研究は、ステフェンスハマダラカがアフリカ都市部でのマラリア集団発生に役割を担っていることの、これまでで最も強力な証拠を示し、この急速に広がっている蚊がもたらす公衆衛生上の重大な脅威を浮き彫りにしている。