2型糖尿病:2型糖尿病に最適な第二選択療法および第三選択療法を決定するための患者層別化 ─ TriMaster研究
Nature Medicine 29, 2 doi: 10.1038/s41591-022-02120-7
精密医療は、個々の患者をその臨床的特徴に基づいて治療することを目指している。患者によってさまざまに異なる薬剤応答は、患者の臨床的特徴を治療法選択に用いる際に重要だが、2型糖尿病では直接的に調べられたことがない。本論文では、(1)ボディーマス指数(BMI)30 kg/m2を超える患者は、BMI 30 kg/m2以下の患者と比較した場合、チアゾリジンジオン系薬剤の方がDPP4阻害剤よりも大きなグルコース値低下を示す、(2)推算糸球体濾過速度(eGFR)が60~90 ml/min/1.73 m2の患者は、eGFRが90 ml/min/1.73 m2を超える患者と比較した場合、DPP4阻害剤の方がSGLT2阻害剤よりも大きなグルコース値低下を示す、という2つの仮説を検証した。これら2つの仮説の主要評価項目は、層別化した集団間で2種類の薬剤により得られたHbA1c値の差であった。合計で525人の2型糖尿病患者が、英国を拠点とするこの無作為化二重盲検3期クロスオーバー試験に参加した。この試験では、メトホルミン単剤治療もしくはメトホルミンとスルホニル尿素薬での治療に、シタグリプチン100 mg 1日1回、カナグリフロジン100 mg 1日1回、もしくはピオグリタゾン 30 mg 1日1回追加投与のいずれかが、決められた順序で16週間ずつ行われた。全体として、達成されたHbA1c値は3種類の薬剤で類似しており、ピオグリタゾン群59.6 mmol/mol、シタグリプチン群60.0 mmol/mol、カナグリフロジン群60.6 mmol/mol(P = 0.2)であった。BMI 30 kg/m2を超える参加者は、BMI 30 kg/m2以下の参加者と比べると、HbA1c値がピオグリタゾンで、シタグリプチンに比べて2.88 mmol/mol(95%信頼区間〔CI〕:0.98, 4.79)低かった(n = 356、P = 0.003)。eGFRが60~90 ml/min/1.73 m2の参加者は、eGFRが90 ml/min/1.73 m2を超える参加者と比べると、シタグリプチンでのHbA1c値がカナグリフロジンよりも2.90 mmol/mol(95% CI:1.19, 4.61)低かった(n = 342、P = 0.001)。報告された有害事象は2201件で、無作為化された参加者の525人中447人(85%)が少なくとも1つの治験薬で有害事象を経験した。我々の結果は、この2型糖尿病での精密医療臨床試験では、所与の患者に最大の血糖降下をもたらす可能性が最も高い薬剤クラスを突き止めるために、簡単で日常的に利用可能な臨床測定値を用いることの有効性を証拠だてている。(ClinicalTrials.gov登録番号:NCT02653209;ISRCTN登録番号:12039221)