2型糖尿病:2型糖尿病での第二選択療法および第三選択療法に対する患者の選好 ─ TriMaster研究の事前指定副次評価項目
Nature Medicine 29, 2 doi: 10.1038/s41591-022-02121-6
慢性疾患、例えば2型糖尿病などでは多数の異なる薬剤が使えるため、薬剤の選択には患者の好みが非常に重要になる。患者の好みは、考えられる有効性と想定される副作用とを比較した結果である。薬剤応答が持つこのような2つの性質は、個人間で大きくばらつくため、この決定については、クロスオーバー試験で行われるように、患者個人が選択可能な複数の薬剤を自分で経験することによって情報が得られると考えられる。TriMaster試験(NCT02653209、ISRCTN12039221)は、無作為化二重盲検3期クロスオーバー試験であって、患者は3つの異なる第二選択療法または第三選択療法である2型糖尿病血糖降下薬(ピオグリタゾン30 mg、シタグリプチン100 mg、カナグリフロジン100 mg)を1日1回投与された。そして、3種類の薬剤全てを順番に投与された後の患者の薬剤の選好が、事前指定した副次評価項目の一部として調べられた。合計で448人の参加者が、3種類の薬剤全てを投与され、全体として同程度の血糖コントロールが見られた(HbA1cはピオグリタゾンでは59.5 mmol mol−1、シタグリプチンでは59.9 mmol mol−1、カナグリフロジンでは60.5 mmol mol−1、P = 0.19)。合計で、115人の患者(25%)がピオグリタゾンを、158人の患者(35%)がシタグリプチンを、175人の患者(38%)がカナグリフロジンを選ぶと報告した。個々の患者が選んだ薬剤は、選ばなかった薬剤よりもHbA1cを低下させ(平均:4.6 mmol mol−1、95% CI:3.9、5.3)、選ばなかった薬剤に比べて副作用も少なかった(平均:0.50、95% CI:0.35、0.64)。全体として最も選ぶ患者が多かった薬剤(カナグリフロジン)を全患者に割り当てるよりも、個々人が選んだ薬剤に基づいた治療を割り当てた方が、より多くの患者でHbA1cが最も低下し(70%対30%)、副作用も最小となった(67%対50%)。個人にとって最適な治療法を精密医療的な方法では明確に予測できない場合は、長期治療を選択する前に患者自身が最も適していると思う薬剤候補を試せるようにすれば、2型糖尿病治療の最適化に対する実用的な代替法となるだろう。