Perspective
がん免疫療法:腫瘍炎症に関連する神経毒性
Nature Medicine 29, 4 doi: 10.1038/s41591-023-02276-w
がん免疫療法には特有の毒性がある。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法が行われたB細胞悪性腫瘍患者では、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)のような毒性症候群が見られ、これらに対する重症度の評価基準を作成し、その基準(グレード)に基づいて標準化された治療アルゴリズムを構築することによって、がん免疫療法の安全性を向上させることができる。中枢神経系(CNS)腫瘍に対する細胞療法が行われた患者では、CRSやICANSとは異なる毒性症候群が観察されており、我々はそれを腫瘍炎症関連神経毒性(TIAN)と呼んでいる。TIANは「偽増悪」(pseudoprogression)という現象を含むが、炎症誘導性浮腫のみよりも広義であり、細胞療法だけでなく、CNS腫瘍に対する他の免疫療法にも関連している。CNS腫瘍の患者に対して細胞療法を安全に実施するために、我々はTIANを定義し、TIAN症候群に関する毒性の評価基準(グレード)を提案することで、この疾患概念の管理の可能性について議論し、疾患の報告と管理の両方の標準化を目指す。