Editorial

今我々に必要なのはゲノミクスに精通した医療従事者だ

Nature Medicine 29, 8 doi: 10.1038/s41591-023-02522-1

遺伝学は、希少疾患の診断や出生前検査などの特定の分野ではかなり以前から用いられてきたが、ヒトゲノム計画が完了してから20年後の現在、臨床での診察の多くの領域に広がりつつある。しかし臨床における遺伝情報の解釈と患者への伝達は容易ではない。例えば、遺伝子検査の場合、他の家族構成員に重大な影響を及ぼす可能性があるし、慎重なカウンセリングが必要な病気のリスクが偶発的に見つかることもある。医療を行う側は、バイオインフォマティクスのデータの扱いに精通しているバイオインフォマティシャン、臨床遺伝専門医、カウンセラーなどの養成と確保を拡大するだけでなく、医師自身も遺伝情報に精通すべきである。臨床場面でのゲノム技術の活用には学際的なチームも不可欠だ。一方で、ゲノム塩基配列解読や遺伝子治療は非常に高価で、医療の不平等をさらに悪化させる危険性がある。ゲノム革命の臨床での可能性を最大にするには、急速に発展する遺伝学技術に後れを取らないように進化できる学際的な知識を持つ医療従事者を育てる必要がある。

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