隠れエキソン:体液バイオマーカーから明らかになった発症前ALS–FTDにおけるTDP-43によるスプライシング抑制の喪失
Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-023-02788-5
TDP-43(TAR DNA-binding protein 43 kDa)によるスプライシング抑制が喪失していることは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)の死後組織ではよく確認されているが、この異常が疾患の初期段階でも起こるかどうかはまだ解明されていない。隠れエキソンの含有はTDP-43の機能が喪失していることを反映しているため、隠れエキソンの塩基配列を持つネオエピトープを含むタンパク質を脳脊髄液(CSF)中または血中で検出できれば、患者に出現するTDP-43調節異常の最初期段階が明らかになる可能性がある。今回我々は、TDP-43依存的な隠れエピトープ(HDGFL2中の隠れエキソンの塩基配列を含む)に特異的なモノクローナル抗体を特性解析によって選び出し、この抗体を用いて、TDP-43によるスプライシング抑制の喪失がALS–FTDにおいて起こっており、これは発症前のC9orf72変異保有者にも当てはまることを明らかにした。対照群と比べて家族性ALS–FTDと孤発性ALSでは、隠れHDGFL2(hepatoma-derived growth factor-like protein 2)のCSF中への蓄積が有意に高く、また家族性ALS–FTDでは、ニューロフィラメント軽鎖とリン酸化ニューロフィラメント重鎖のタンパク質レベルの上昇よりも早期に上昇した。隠れHDGFL2は、ALS–FTD患者(発症前のC9orf72変異保有者を含む)の血中でも検出することができ、血中での蓄積レベルはCSF中の蓄積レベルと強く相関していた。我々の知見は、TDP-43による隠れスプライシング抑制の喪失が、疾患進行の初期に、発症前であっても起こっていること、また、HDGFL2の隠れネオエピトープの検出が、ALSの診断バイオマーカーとなる可能性を示しており、これを利用することによって、臨床試験での患者の募集や標的への作用確認の測定が容易になるだろう。