がん免疫療法:進行性転移性固形腫瘍を対象とする共通ネオアンチゲンワクチンと免疫チェックポイント阻害の併用 ─ 第1相試験の中間結果
Nature Medicine 30, 4 doi: 10.1038/s41591-024-02851-9
腫瘍特異的なネオアンチゲンを標的とする細胞傷害性T細胞応答を引き起こす治療用ワクチンは、がん患者に長期的な臨床的利益をもたらすと期待されている。本論文では、進行性転移性固形腫瘍患者で進行中の第1/2相試験について報告する。この試験では、ありふれた発がんドライバー変異に由来する20の共通ネオアンチゲンを選抜し、それらをコードする治療用ワクチンの安全性と忍容性を主要評価項目として評価した。副次評価項目には、免疫原性、全奏効率、無増悪生存期間、全生存期間を含めた。適格患者の選択は、その腫瘍がこのワクチンに含まれる腫瘍変異の1つに対応するヒト白血球抗原を発現している場合とし、患者の大多数(18/19人)がKRASに1つの変異を持っていた。ワクチンレジメンは、チンパンジーアデノウイルス(ChAd68)および自己増幅型mRNA(samRNA)と、免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブおよびニボルマブの併用から構成され、忍容性が良好であることが示された。また、観察された治療関連有害事象は、ウイルスベクターを用いるワクチンと免疫チェックポイント阻害から予想される急性炎症と一致したが、大多数はグレード1/2であった。しかし、2人の患者でグレード3/4の重篤な治療関連有害事象が見られ、これが用量制限毒性でもあった。全奏効率は0%、無増悪生存期間の中央値は1.9カ月、全生存期間の中央値は7.9 カ月であった。T細胞応答は、患者の腫瘍が発現するKRASネオアンチゲンと比べて、ワクチンにコードされるヒト白血球抗原に対応したTP53ネオアンチゲンに偏っていた。これは、ネオアンチゲン免疫優勢にはこれまで知られていなかった階層があることを示していて、共通ネオアンチゲンを用いるマルチエピトープワクチンによる治療の有効性に影響を及ぼす可能性がある。これらのデータは、KRAS由来ネオアンチゲンのみを標的とする最適化ワクチンの開発につながり、この臨床試験の第2相において一部の患者を対象に評価が行われている。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT03953235。