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より効果的なてんかん治療薬への一歩

Nature Medicine 9, 11 doi: 10.1038/nn1791

ラットのてんかん発作を抑えるまったく新しい方法を報告した論文が、Nature Neuroscience11月号に掲載される。この研究結果は、解糖阻害剤を使った新しいてんかん治療法の可能性を示唆している。

 てんかん患者は世界の総人口の1%に上るが、そのうち3分の1は、現在利用可能な治療薬では発作を抑制できない状態である。Avtar Roopraたちは、重度のてんかん患者の一部が炭水化物ゼロの食事で症状が改善したという事実にヒントを得た。この「ケトン産生」食は、数十年も前から知られているが、てんかんの症状改善に役立つ理由やそのプロセスについては誰も解明できなかった。解糖とは、炭水化物が分解される過程のことだが、てんかん患者にケトン産生食を実施すると、解糖作用は阻害される。Roopraたちは、てんかんのラットに解糖阻害剤を注射する実験を行い、発作の件数も重篤度も大きく減ったことを報告している。

 Roopraたちは、解糖の最終産物の1つが神経細胞の興奮性を高めるので、解糖を阻害すれば神経細胞の興奮性を抑制し、発作の可能性を減らせると推論した。そして解糖産物の1つであるNADHが神経細胞中の特定の興奮性誘発遺伝子の発現を増大させ、解糖を阻害すると同遺伝子の発現が低下することを発見した。

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