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聴覚性の反復と失読症
Nature Medicine 9, 12 doi: 10.1038/nn1800
発達性失読症は、読字能力の獲得がむずかしいことが特徴のよくある病気である。失読症の根本原因は論争の的となっているが、言語を構成する音の処理障害が関連すると思われる。この処理はおそらく単語の意味を決定するのに必要な段階であろう。この仮説と一致するように、失読症患者は失読症でない人に比べ、多くの聴覚課題をうまく行えない。
Merav Ahissarらは、学習障害をもつ失読症患者の亜集団は、聴覚課題において役立つ音の反復を利用できないとの報告をしている。失読症被験者は、対照被験者と同じように、多数の音刺激の集団から複数の音刺激を抜き出して2種類の聴覚識別課題を行った。刺激群が少数だと、対照被験者の成績は改善した。おそらく、課題をこなすのに役立つ規則性を利用することができたためである。失読症の被験者は逆に、音の反復を含んだ少数の刺激群をうまく利用できず、その条件下では対照被験者より成績が悪かった。Ahissarらは、これは失読症患者が反復刺激の記憶痕跡を形成できないためかもしれないと示唆している。この障害は学習障害のない失読症患者に一般化できるのか、また読字能力の困難さと因果関係があるのかはさらに研究が必要である。