Research Highlights
有機太陽電池:引力に打ち勝つ
Nature Nanotechnology 2013, 1013 doi: 10.1038/nnano.2013.213
太陽電池は、太陽エネルギーを電気信号に変換する。シリコン系光起電力デバイスと並んで、製造コストが本来的に低いため、共役ポリマーとフラーレンの混合物でできた太陽電池が開発されている。こうしたデバイスでは、束縛された電子ホール対が光子の吸収によって生成される。この電子ホール対は、クーロン引力に打ち勝って分離し、自由電子と自由ホールにならなければならない。その後、こうした電荷担体は電極に集められ、光電流が生じる。しかし、電荷分離のメカニズムはよく分かっておらず、材料パラメーターの最適化の妨げとなっている。ヴィリニュス大学(リトアニア)のV Gulbinasたちは今回、電荷分離の駆動メカニズムが拡散であることを明らかにした。
Gulbinasたちは、P3HT:PCBM太陽電池における電荷担体のダイナミクスを、ピコ秒からナノ秒の時間スケールで調べた。時間分解電場誘起第二高調波とモンテカルロシミュレーションを用いて、担体ダイナミクスと電荷分離に対するドリフトと拡散それぞれの寄与が特定された。その結果、サブピコ秒の時間スケールでは電荷担体の移動距離が非常に小さいことが分かり、電荷担体の長距離分離が初期に起こるとする仮説が除外された。Gulbinasたちは、印加電場によるドリフトではなく高速拡散によって、クーロン引力に打ち勝つ距離まで電荷分離が駆動されることも見いだしている。こうした結果は、効率の高い有機太陽電池を作製するには、拡散係数に比例する電荷担体移動度の最適化が重要であることを浮き彫りにしている。