投稿案内
- 論文原稿のオンライン査読
- Nature Nanotechnology について
- 掲載基準
- 査読過程
- 査読者の人選
- 査読報告書の執筆
- 査読者が考慮すべき他のポイント
- 守秘義務
- 時間厳守
- 匿名性
- 査読報告書の編集
- 利害関係の対立状況
- 査読者に対するフィードバック
論文原稿のオンライン査読
査読者の皆様には、編集者からの電子メール上のリンクから本誌のオンライン査読システムに入り、査読者のコメントを提出されることを強くお勧めします。同システムについてヘルプが必要な場合は、「Referee Instructions」ご覧ください。本誌の編集アシスタントへの連絡は、メールにてご連絡ください。
Nature Nanotechnology について
Nature Nanotechnology は、科学的な質の高さと関心度の高さで群を抜く研究論文の集まる知名度の高いフォーラム作りを目指す国際的な月刊ジャーナル誌です。本誌とNature 誌は同じ出版社から発行されていますが、編集体制は相互に独立しています。他のNature 関連誌と同じく、本誌には社外の編集委員会がなく、常勤の編集スタッフが全ての編集上の決定について責任を負っています。Nature Nanotechnology に関する詳しい情報は、「Nature Nanotechnology について」をご覧ください。本誌に関する質問で、ここに答えがない場合には、査読者の皆様は、編集者に問い合わせることをお勧めします。
掲載基準
毎月、Nature Nanotechnology には、一度に掲載できる論文数をかなり上回る数の論文原稿が送られてきます。したがって査読者は、1本の論文が受理するためには、別の1本の良質の論文を不採用としなければならない点を肝に銘じる必要があります。1本の論文がNature Nanotechnology で掲載されるためには、次の4つの一般的な基準を満たす必要があります。
- 論文に提示された結論を裏づける有力な証拠が論文中に示されていること
- 研究結果に新規性が認められること(既に抄録が公表されていたり、インターネット上で未定稿が発表されていても新規性は損なわれないと考えます。)
- その研究が特定の分野の科学者にとって重要であること
- その論文が、ナノサイエンスやナノテクノロジーの他の分野の研究者の関心をひくものであること
一般に論文が受理されるには、1つの研究分野における論点の解明を進めて、従来の考え方に影響を与える可能性の高いものである必要があります。一流の専門論文誌ではなく、知名度の高いNature Nanotechnology に掲載されるにふさわしい何らかの理由が必要なのです。
査読過程
編集スタッフは、投稿された論文原稿すべてに目を通します。著者と査読者の時間を節約するため、本誌の編集基準を満たす可能性が非常に高いと考えられる論文のみについて正式の査読が行われます。幅広い関心を呼ばない、あるいは適切でないと編集者が判断した論文は、社外での査読なしに直ちに不採用となります。(ただし、そのような決定は、その分野の専門家の非公式の助言に基づいている場合があります。)
本誌の読者の関心を集める可能性があると判断された論文原稿については、通常2~3人の査読者による正式の査読が実施されます。そして編集者は、査読者の助言に基づいて、次のいずれかの決定をします。
- 受理(編集上の修正が加わる場合があります)
- 最終決定を保留し、著者に対し、論文原稿を修正して具体的な問題点を解消するように促すこと
- 不採用(ただし追加的研究を行うことで再提出が認められる可能性があることを通知する)
- 明確に不採用とすること(専門家のみが興味を示すこと、新規性の欠如、理論的進展が不十分なこと、技術面または解釈面で大きな問題があること等が一般的な理由となる)
査読者が具体的な結論を示すことは歓迎しますが、他の査読者が異なる見解を示す可能性があり、編集者は内容的に対立する複数の助言をもとに決定を下さざるを得ない場合があることに留意してください。したがって最も役に立つ報告書とは、編集者が決定を下す際に依拠すべき情報について記載された報告書ということになります。掲載決定に対して賛成、反対の両方の立場からの議論を展開した報告書は、編集者の決定内容を直接的に勧告した報告書と同程度に役立つことが多いのです。
編集上の決定は、多数決や数値評価の積み上げによって行われるものではありません。常に多数意見に従って決定を下しているわけではないのです。本誌では、各査読者および著者の主張の論拠を評価することに努力を払い、いずれからも提供されていない他の情報を考慮に入れる場合もあります。本誌は、主として読者と学界全体に対して責任を負っており、読者や研究者に最も役立つような方針を決めるためには、それぞれの研究論文に示された主張と他の検討対象論文での主張との間で比較考量をしなければならないのです。
特に査読者間で意見が対立している場合や事実問題で誤解をあると著者が考えている場合には、査読者に再度助言を求めることがあります。したがって査読者は、求めに応じて追加的助言をしなければなりません。査読者の皆様が長引く論争に引きずり込まれたくないと一般に考えておられることは十分にわかっておりますので、皆様に助言を求めるのは、著者に公平な聴聞の機会を与える上で必要最低限の範囲内にとどめるように努力します。
査読者が論文の査読に同意した場合、その後の修正版の査読についても同意したものと見なされます。ただし論文の再提出があっても、著者が査読者の批判に真剣に応えようとした様子が伺われない場合には、その論文は査読者には送付されません。
本誌では、査読者の批判を極めて真剣に受け止め、特に技術面での批判はほとんど全て検討します。1人の査読者のみが掲載に反対している場合には、他の査読者と協議して、反対している査読者が不当に厳しい基準を適用していないかどうかを調べることがあります。時には査読者を追加して論争を決着させることもありますが、追加的助言が必要と考えられる具体的論点がない限りは、そのようなことは避けたいと考えています。
査読者の人選
査読者の人選は、査読過程にとって重大な意味をもっています。本誌では、専門家としての力量、世評、具体的な推薦、過去の本誌での査読作業で認められた特性など数多くの要素をもとにして人選が行われます。例えば、慢性的に作業が遅く、不注意で、過度に厳しいか甘い評価をする査読者は選ばないようにしています。
通常、査読者候補に問い合わせてから査読のための論文原稿を送っています。査読者の皆様は、送付物には秘密情報が含まれており、相応の取扱いが求められる点に留意してください。
査読報告書の執筆
査読の主たる目的は、編集者が決定を下すために必要な情報を提供することです。また査読報告書では、受理されうるレベルまで論文を強化するための方法が著者に示されることが望まれます。掲載に否定的な報告書では、できるだけ論文原稿の弱点を説明して、不採用の理由が著者にわかるようにすることが望まれます。ただし、この点は、報告書の他の機能からすれば二次的なものであるため、査読者の皆様は、Nature Nanotechnology の掲載基準を満たさない論文の著者に細かな助言を与える義務があると考える必要はありません。
編集者に秘密裏にコメントを送ることは歓迎しますが、その要点が著者に送付されるコメントの中で示されていることが望まれます。以下の各論点に対応できていれば、理想的な査読報告書と言えます。
- 論文の主だった主張とその意義
- 主張の新規性の有無。もし新規性がなければ、新規性の欠如の原因となっている主要な論文名を挙げてください。
- この論文に関心をもつことが予想される読者・研究者層とその理由
- 同じ研究分野の論文の中で、この論文は何らかの点で傑出しているかどうか
- 論文中の主張に説得力があるかどうか。説得力がない場合は、追加する必要のある証拠の内容を挙げてください。
- この論文での主張を補強できるような追加的実験の存否
- その実験によって論文が改善される程度。実験の難易度の予想。
- 論文における主張が、既に発表された文献において適切に検討されていないかどうか。
- 今のままでは論文原稿を受理できない場合、この研究が、著者に将来的な論文の再提出を推奨できるほど十分に有望だと考えられるかどうか。
査読者が考慮すべき他のポイント
さらに検討する価値のある論文原稿の場合には、査読者が以下のポイントについて助言すると役に立ちます。
- 論文原稿の記述は明瞭か。明瞭でない場合、専門外の読者にとって明瞭あるいは読みやすい文章とするには、どうすればよいのか。(文法やスペルについて詳細なコメントをつける必要はありません。この論文が受理されれば、本誌のコピーエディターが処理します。)
- (本誌の場合、紙幅に限りがあることから)論文原稿の短縮は可能か。もし1~2件の実験のみを説明する論文であれば、フル論文ではなく、レター論文として発表する方が適切ではないのか。
- 著者は自らの研究成果を適切に示し、過大な表現を避けているか。
- 著者は過去の文献を公平に取り扱っているか。
- 著者は実験方法の詳細を十分に示し、それで実験を再現できるようになっているか。
- データの統計解析は適切になされているか。
- 著者に対しては、Nature Nanotechnology のウェブサイトで方法に関する補足情報や補足データを公開するように要請すべきか。(そのようなデータには、モデル研究のソースコード、方法の詳細、数学的微分が含まれます。)
- 動物やヒト被験者を使用することで特殊な倫理的問題が発生するか。
守秘義務
査読者は査読過程を極秘に扱わなければならず、査読に直接関与していない人と論文原稿について話し合ってはいけません。研究室の同僚に助言を求めることは認められますが、誰の助言を求めたのかについては編集者に報告してください。査読者が所属する研究室の外部の専門家に助言を求めることは認められていますが、事前に編集者に問い合わせて、著者によって相談することが禁じられている者が関与しないようにしてください。
時間厳守
Nature Nanotechnology は、編集上の決定を迅速に下し、迅速に論文を発表するために全力を尽くします。本誌では、編集プロセスの効率化が論文著者と学界全体にとって貴重だと確信しています。したがって査読者は迅速に対応することが求められます。(通常は論文原稿を受け取ってから2週間以内に査読を完了させてください。ただし、事前の取り決めによって、この期間の長さを変えることが可能です。)遅れの長期化が予想される場合、査読者は本誌に連絡してください。これによって著者に情報を提供でき、また必要に応じて別の査読者を探すことができます。
匿名性
本誌は、査読者自身が氏名の公表を具体的に求めない限り、査読者が誰かという情報を著者やその他の査読者に発表しません。査読者が氏名の公表を強く主張しない限り、本誌では、査読過程中、査読過程後を問わず、査読者の匿名性を確保したいと考えています。査読者は、氏名を公表する前に、他の査読者による批判にコメントを求められる可能性を考慮に入れるべきです。この状況下で氏名を公表すると客観性を保つことがより難しくなるかもしれません。
査読者は、自分が査読者であることを編集者に無断で著者に通知してはいけません。自分が査読者であることを発表したい場合には、編集者を通じて行ってください。
著者が査読者と対決しようとしたり、査読者の正体を明らかにしようとすることは、遺憾なことだと思います。査読者の正体をめぐる憶測については肯定も否定もしないことが本誌の方針であり、査読者自身も同じ方針に従うことを推奨します。
査読報告書の編集
本誌は、査読報告書の内容を隠ぺいしない方針をとっており、査読者が論文著者のために書いたコメントは、その内容についての本誌の見解にかかわらず、著者に送付されます。ごくまれに査読報告書を編集して、侮辱的な言葉遣いを削除したり、他の事項に関する秘密情報が示されたコメントが削除することはあります。査読者は、不必要に相手の感情を害するような表現を避けることが望まれ、逆に論文著者は、荒々しい言葉遣いによる批判だから公正を欠くと直ちに断言できないことを認識すべきです。
利害関係の対立状況
論文著者が何らかの理由で除外を求めた人物には査読を依頼しないというのが本誌の通常の方針です。また最近になって論文著者と共同研究を行い、あるいは現在共同研究を行っており、なおかつ論文原稿の草稿にコメントしたことがあり、同じ研究結果に関する論文発表で直接的に競合しており、過去に論文著者と紛争があったことが本誌に判明しており、あるいは研究成果に対して金銭的利害のある人物に対する査読依頼も通常は避けています。編集者が、偏見の生じる可能性をすべて把握するのは不可能ですが、査読者は、その査読に影響を与えうる全ての事象を編集者に知らせ、査読の客観性を保てないと感じる時には査読の依頼を断るようにしてください。
ただし利害の対立は常に明快とは限らないため、本誌としては、上述した状況があっても査読報告書の有効性が直ちに損なわれるわけではないことを認識しています。確かに論文を評価するのが最もふさわしいのは、関連する研究分野に最も近い人々であることが多く、特定の主張に懐疑的な姿勢を示す査読者であっても新たな証拠を示されれば主張の正当性を認める可能性はあるのです。本誌では、査読報告書を評価する際に、これらの要素を考慮に入れるように努めます。
別の論文誌に投稿された論文を査読した後に、Nature Nanotechnology で同じ論文を再び査読するのは論文著者にとって公平でないと考える査読者がいるかもしれません。本誌では、そのようには考えません。2つの論文誌が、その論文の査読にふさわしい人物として同一人物を独自に選んだわけですから、それによって、その人物の査読の有効性が損なわれることはないと私たちは考えます。
査読者に対するフィードバック
査読者の批判を受けて修正された論文原稿の再査読を依頼する際には、原則として他の査読者のコメントの写しも添付します。論文の採否に関する決定は査読者にも電子メールで通知し、その際には他の査読者の報告書の写しを添付するのが通例です。
通常、論文受理の通知は、不採用を勧告した査読者に対してもなされます。査読者は、自分の意見が認められなくても、その判断に対する信頼性が決して失われていないことを理解すべきです。専門家の間で意見が分かれることは珍しくなく、編集者としては、たとえコンセンサスがない場合でも何らかの決定を下さなければならないのです。