Research Highlights
電気穿孔法:水をきれいにするとげ
Nature Nanotechnology 2013, 1013 doi: 10.1038/nnano.2013.214
膜ろ過や紫外線消毒などの水を消毒する現在の方法は、財政的にもエネルギー的にも多額の費用がかかる。また、塩素の添加などのより安価な方法では、発がん性物質が副次的に作られることが分かっている。電気穿孔法は、分子生物学でよく使われる手法で、強い電場をかけ、細菌やウイルスの細胞膜に損傷を与えて死をもたらすもう1つの方法である。しかし、この方法には高い外部電圧が必要で、費用、エネルギー消費、安全性の点で懸念がある。
スタンフォード大学(米国)のY Cuiたちは今回、ナノスポンジろ過デバイスを開発した。これは、ナノ材料を市販のポリウレタンスポンジに組み込んで、電気穿孔による効率的な消毒を実現するものだ。カーボンナノチューブをスポンジに加えて導電性を持たせ、銀ナノワイヤーを加えてナノスケールのとげを多数作っている。このとげによって電場強度が増加し、平坦な表面によって生じる電場に比べて、数桁大きな電場が生成される。
Cuiたちは、さまざまなモデル細菌やモデルウイルスを含む水源を用いて、このナノスポンジの性能を評価した。外部電圧を高くすると微生物の不活化が増大し、細菌の99%が10 Vで、ウイルスの99%が20 Vで不活化された。さらに、このプロセスの間に有害な副産物は作られず、10 Vでのエネルギー消費は、膜ろ過が500 J I-1以上であるのに対し、100 J I-1と少なかった。