Research Highlights
分子スピントロニクス:4f状態を調べる
Nature Nanotechnology 2013, 1113 doi: 10.1038/nnano.2013.245
分子スピントロニクスでは、磁性分子を金属電極と相互作用させて、分子のスピン状態を測定する。しかし、4f状態などのスピン偏極状態にある電子を調べるのは、そうした状態がフェルミ準位からずっと遠くにあり、電荷輸送に寄与しない場合、困難である。後期ランタノイドを含む分子がこれに当たる。さらに、分子状態と電極状態の間の軌道の混成は、分子の磁気モーメントが消失するまでの範囲で、分子の磁気特性に影響を与えうる。ユーリヒ総合研究機構とアーヘン工科大学(いずれもドイツ)のN AtodireseiとC Bessonたちは今回、走査型トンネル顕微鏡を用いてスピン偏極した4f状態を調べることができ、さらに分子の磁気モーメントを維持できる分子–電極モデル系を研究している。
AtodireseiとBessonたちは、走査型トンネル分光法を用いて、Cu(100)表面に吸着した単一のビス(フタロシアニナト)ネオジム(III)(NdPc2)分子の状態密度を測定した。ネオジムの3つの4f電子は、後期ランタノイドよりも局在しておらず、Pc配位子との混成度がより高い。さらに、それらは全て同一のスピンチャネルにあり、その結果正味の磁気モーメントが生じている。トンネル顕微鏡のティップを用いて分子の上のさまざまな位置(中心部の上とPc配位子の上)のスペクトルを取得し、得られたスペクトルをab initio計算の結果と比較することで、4f状態がトンネル電流に寄与し、磁気モーメントを運んでいると結論づけられた。