Research Highlights

磁壁:キラリティを設定する

Nature Nanotechnology 2013, 1213 doi: 10.1038/nnano.2013.280

磁壁のキラリティつまり掌性は、電流によって生じる磁壁運動の伝播方向と速度に影響を及ぼすことができる。通常の金属と接触した磁性薄膜では、ジャロシンスキー-守谷相互作用によって2つの金属の界面に磁壁キラリティが生じる。従って、この相互作用の変化を用いて、電流によって生じる磁壁ダイナミクスを制御できる。ローレンス・バークレー国立研究所(米国)、復旦大学(中国)、慶熙大学(韓国)のY WuとA Schmidたちは今回、Ir基板とPt基板のどちらでも、非磁性基板との界面におけるジャロシンスキー-守谷相互作用を操作して、Co/Ni多層膜の磁壁のキラリティを制御できることを示している。

WuとSchmidたちは、まずスピン偏極低エネルギー電子顕微鏡によってキラルなネール型磁壁のスピン構造を画像化し、Pt基板上では右手系、Ir基板上では左手系と、多層膜積層のキラリティが正反対になることを観察した。次に、Co/Ni積層とPt基板の間にIr層を挿入して、Ir層の厚さを変えるとジャロシンスキー-守谷相互作用の強さを調整でき、従って磁壁のキラリティを制御できることを実証した。厚さを0.6単層から、2.5単層、3単層へと増やすことによって、右手系のキラルなネール磁壁、アキラルなブロッホ磁壁、左手系のキラルなネール磁壁が観察された。

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