Research Highlights
らせん状ナノ構造体:ホモポリマーの二重らせん
Nature Nanotechnology 2013, 513 doi: 10.1038/nnano.2013.90
DNAの二重らせん構造は、合成超分子化学における着想の源となっていることが多く、非共有結合相互作用によって結合する、全く異なるが相補的な2本のポリマー鎖から二重らせんがこれまでに作られている。名古屋大学の八島栄次たちは今回、同じポリマーの2本の鎖から二重らせんを自己集合させている。
このポリマーは、m-テルフェニルを基にした骨格を持っている。骨格を作るm-テルフェニル基は、単一の炭素-炭素結合によって三日月形に結合した3つのベンゼン基から成る。中央のベンゼンにカルボン酸認識基が結合しており、2本のポリマー鎖にあるカルボン酸基の間に水素結合が形成されることで、自己集合過程が駆動される
このホモポリマー系は、優先ヘリシティを持たない(結晶構造がラセミ的である)が、キラル分子を加えると、らせんキラリティの増幅が溶液中で実現されうる。特に、八島たちは、2本の鎖の間にキラルアミンがあってサンドイッチ構造を形成していれば、二重らせんが凝集して優先掌性が生じることで、この鎖にキラル情報を伝達できることを示しているこの自己集合機構は、2本の鎖のアミノ基とカルボキシル基の間の酸塩基認識モチーフによって駆動される。