Research Highlights
ナノ結晶:狭き門を通る
Nature Nanotechnology 2013, 613 doi: 10.1038/nnano.2013.115
固体は、通常はその物理状態を変えずにそれ自体より小さな穴を通ることはできない。カリフォルニア大学バークレー校とローレンス・バークレー国立研究所(いずれも米国)のS Cohたちは今回、内径が20 nmのカーボンナノチューブに完全に充填された鉄ナノ粒子が、融解と再結晶化をせずに5 nmの狭窄部を細く絞られながら通ることができるという興味深い例外を発見した。
Cohたちは、in situ透過型電子顕微鏡を用いて、電流を印加したカーボンナノチューブを通る鉄ナノ結晶の運動を調べた。電子顕微鏡画像と回折像から、狭窄部を通る間に鉄ナノ結晶は固体と結晶性を本質的に維持していたことがわかった。こうした観察結果を説明するため、Cohたちは、動力学的モンテカルロシミュレーションを行った。このシミュレーションでは、カーボンナノチューブに印加した電流に比例する電気泳動力を、個々の鉄原子が受けると仮定されている。その結果、カーボンナノチューブに接触している鉄原子のみが電流の方向に移動し、バルク内の原子は静止したままであることがわかった。したがって、このシミュレーションによると、表面の原子は常に前方に動いていて、鉄ナノ粒子の後端部が分解され、次に先端部で再集合するのである。このことは、先端部が狭窄部に合うようにサイズを調節するため、鉄ナノ粒子全体が結晶性を失わずに通過できることを意味している。