Research Highlights
水素原子:電子の軌道を見る
Nature Nanotechnology 2013, 713 doi: 10.1038/nnano.2013.136
粒子の波動関数は、その粒子の空間的な位置の確率分布を表している。しかし、粒子の位置測定は、可能な固有状態の1つへの粒子の波動関数の投影を必要とする。粒子の量子状態の再構築は、こうした測定結果の統計処理によってのみ可能である。FOM-AMOLF研究所(オランダ)、マックス・ボルン研究所(ドイツ)、リヨン大学(フランス)、イオアニナ大学(ギリシャ)、オーバーン大学(米国)のA StodolnaとM Vrakkingたちは今回、光イオン化顕微鏡測定を用いて、印加電場の存在下において、励起した水素原子における電子の波動関数の節構造を観測している。 StodolnaとVrakkingたちは、水素原子のビームを作り、次に2つのレーザーパルスで励起した。水素原子はまず2s状態と2p状態の混合状態に励起され、その後原子がイオン化される高励起状態に最終的に励起された。この際、レーザーの波長を調節することで、異なる原子状態を選択できる。放出された電子は、電場に直交して配置された検出器に向かって進み、検出器のスクリーンに捉えられて干渉パターンを生成する。観測される干渉パターンは、電子の波動関数の節構造を反映しており、節構造は量子数に関係している。
StodolnaとVrakkingたちは、この方法によって、主量子数n = 30の4つの異なる励起原子状態の節構造を観測することができた。