Research Highlights

カーボンナノチューブ:ナノリングを使って成長させる

Nature Nanotechnology 2013, 713 doi: 10.1038/nnano.2013.137

カーボンナノチューブは、その電気的、光学的、機械的特性から、さまざまな用途に関心が寄せられている。しかし、こうした特性は、カーボンナノチューブの直径や側面構造(つまりキラリティ)の影響を受けやすく、現在の合成方法では、直径やキラリティがよく定まったカーボンナノチューブを作ることはできない。カーボンナノチューブの基本構造ユニットであるカーボンナノリング(シクロパラフェニレン)が最近合成され、ボトムアップでカーボンナノチューブを合成する方法を開発できる可能性が示唆された。

名古屋大学の伊丹健一郎たちは今回、シクロパラフェニレン・ナノリングをテンプレートとして用いて、このテンプレートの直径と同じくらいの直径のカーボンナノチューブを成長させられることを示している。このカーボンナノチューブは、炭素源となるエタノールのガス流の中でテンプレート分子を約500℃に加熱して生成された。伊丹たちは、カーボンナノチューブの成長はおそらく、エタノールの活性炭素種がナノリング分子の水素原子を置換するラジカル機構に起因すると示唆している。しかし、この方法で作られたカーボンナノチューブの直径の分布は、ラジカル反応によってチューブの構造が変わり、成長中に「誤差」が生まれるため、単分散からはほど遠い。

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