マヨラナ粒子:原子鎖に見つかったマヨラナ状態
Nature Nanotechnology 2014, 1114 doi: 10.1038/nnano.2014.272
1930年代に、理論物理学者エットーレ・マヨラナは、それ自体が自身の反粒子であるという特殊なタイプのフェルミオンの存在を予言した。こうしたマヨラナ粒子が実験的に観測されたことはこれまで一度もないが、近年になってマヨラナ束縛状態の存在に研究者の関心がかなり集まっている。マヨラナ束縛状態はマヨラナ・フェルミオンに似ているが、トポロジカル超伝導体に見つかる可能性があり、強い強磁性体を通常の超伝導体と接触させると形成される。基本的な理由と量子情報にマヨラナ状態を利用できる可能性の両方から、こうした状態への関心が高まっているわけだ。
プリンストン大学とテキサス大学オースティン校(いずれも米国)のA Yazdaniたちは今回、超伝導Pb表面のFe原子鎖においてマヨラナ状態の特徴を観測した。走査型トンネル電子顕微鏡による分光画像化手法を用いて、Fe原子鎖が強磁性体で、Pbと同様に1.4 K以下で超伝導体になることが見いだされた。さらに、走査型トンネル電子顕微鏡のティップを原子鎖の端のどちらかの上に置くと、バイアス電圧がかかっていないときにトンネル電流のピークが観測された(ゼロバイアスピークと呼ばれる)。これは、対になって現れると考えられているマヨラナ状態が、超伝導ワイヤーの端に存在することを示す明確な証拠である。これまで、超伝導体に隣接した半導体ワイヤーにゼロバイアスピークが観測されていたが、このピークがワイヤーの端にあることは確証されていなかった。
次のステップは、3つ以上のマヨラナ状態の間の相互作用を調べることになるだろう。これは、こうしたエキゾティック状態に基づく量子情報の基本的な構成要素である。