Research Highlights
ナノバイオプシー:単一の細胞を調べる
Nature Nanotechnology 2014, 114 doi: 10.1038/nnano.2013.307
さまざまな細胞、例えば腫瘍などの細胞の不均一性を調べる能力は、細胞間相互作用や単一細胞レベルでの疾病の病理の知見を得るのに役立っている。当初は、死んだ細胞に研究の重点が置かれていて、動的な研究ができなかったが、最近、生きている細胞を調べ、細胞小器官から情報を引き出すナノ内視鏡が開発された。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(米国)のN Pourmandたちは今回、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡を用いて、この手法をさらに先に進めた。この走査型イオンコンダクタンス顕微鏡はナノピペットのプローブからなり、細胞死を起こさずに細胞物質を抽出して、その内容物をスループットの高いシーケンシング技術を用いて分析する。
Pourmandたちは、ナノピペットの内外に力を生じさせ溶液を流動させる、エレクトロウェッティングと呼ばれる手法を用いている。ナノピペットを細胞に向けると、ナノピペットは細胞膜に穴を開け、その内容物を吸い出す。このプロセスは、侵襲性が極めて小さく、細胞死を起こさずに同一の細胞に何度も繰り返し行うことができるので、分子ダイナミクスの研究が可能になる。この手法の感度を実証するため、単一細胞のミトコンドリアから内容物が抽出され、次世代ゲノムシーケンシングを用いて分析された。その結果、ミトコンドリアのプールデータの分析では見落とされると考えられる、ミトコンドリアの変異ゲノムが特定された。このように試料選択の排他性が増すため、突然変異や、細胞の機能不全に関与する機構を解明できる可能性がある。