Research Highlights
半導体:赤外用シリコン
Nature Nanotechnology 2014, 214 doi: 10.1038/nnano.2014.20
短波長(1.4~3 μm)の赤外光に対して感度の高い光検出器は、長距離通信などの用途に用いられている。赤外光検出器にシリコンを用いることには、安価で既存の電子デバイス技術と互換性があるという利点があると考えられる。しかし、シリコンは、電子バンドギャップが1.12 eVであるため、1.1 μmより長い波長の光に対して透明である。構造欠陥を導入しシリコンの電子的性質を変化させることで、低温におけるサブバンドギャップ吸収が実現されているが、この方法は応用に適した温度では機能しない。マサチューセッツ工科大学(米国)などのJ MailoaとT Buonassisiたちは今回、高濃度にドープしたシリコンフォトダイオードにおける室温赤外光応答を実証している。
Buonassisiたちは、過飽和濃度の金不純物を厚さ150 nmの薄いシリコン単結晶に導入して、波長2.2 μmまで光応答を示す平面フォトダイオードを作った。金ドーパントによって導入されたミッドギャップ状態が媒体となって、光電流が生成される。つまり、ドーパント状態を介して価電子帯から伝導帯へ電子が励起される。検出効率は比較的低いが、サブバンドギャップ光吸収を増やし、デバイスの設計を最適化することで、100倍まで向上できる可能性がある。さらに、他の不純物元素を用いれば、光応答のスペクトル調整が可能になるかもしれない。