Research Highlights
量子通信:ダイヤモンドのもう1つのスピン
Nature Nanotechnology 2014, 314 doi: 10.1038/nnano.2014.51
窒素空孔(NV)中心は、炭素空孔の近くに位置する窒素不純物原子からなり、最もよく調べられているダイヤモンドの欠陥である。NV中心に伴う電子のスピンは、コヒーレンス時間が長く、光子によって操作できる。こうした2つの特性によって、NV中心は量子通信デバイスの優れた候補となっている。
NV中心に関連する問題の1つは、その発光が本質的に弱いことである。ダイヤモンドのシリコン空孔(SiV)中心は有望な代替候補で、その発光はずっと強い。しかし、電子スピンの特定の状態に伴うSiV中心の発光を検出することはこれまで難しかった。これは、主に電子の基底状態のスピン混合に起因している。今回、ケンブリッジ大学(英国)などのM Atatüreたちは、負に帯電したSiV中心の発光輝線を電子スピン状態でタグ付けすることに成功した。
SiV-中心の蛍光測定によって、電子の基底状態に伴う2つのピークと励起状態に伴う2つのピークが明らかになった。これらのピークは、磁場をかけると、スピン1/2の電子に予想されるように、四重線に分裂した。レーザーによって特定のスピン配位の電子がより高いエネルギー状態に励起されると、発光によって、電子が基底状態に崩壊する前に、より低い励起状態へ緩和することが示されている。磁場とSiV-中心の自然磁化の方向がそろっていないため、基底状態への崩壊はスピンを完璧には保存しない。しかしこれは、試料の成長条件を変えることで改善できる可能性がある。