Research Highlights
ナノチューブ:くっついたり離れたり
Nature Nanotechnology 2014, 614 doi: 10.1038/nnano.2014.119
水素結合やπ– π相互作用などの非共有結合性相互作用を用いて、複雑な自己集合ナノ構造体をつくることができる。こうした相互作用は一般的に共有結合より弱く、集合過程の段階が可逆的となりうるため、「エラー」の修正や極めて規則正しい構造体の作製が可能になる。しかし、いったん組み上がったナノ構造体を操作することは、非常に難しい。日本の相田卓三たちは今回、フェロセンを用いた構成要素が自己集合してナノチューブになり、次に、構成要素間の非共有結合性相互作用を変えることで、このナノチューブを個々のナノリングに分解できることを示している。
フェロセンは、2つのシクロペンタジエニル(C5H5)リングが鉄原子をはさむように結合したサンドイッチ化合物である。金属が配位結合したピリジル基(RC5H4N)を端部に持つ芳香族アームが2つ、各々のシクロペンタジエニル・リングに結合しており、銀イオンが存在すると、こうした構成要素が自己集合して、ピリジル・アームのサイズに応じて直径約7 nmと13 nmの金属有機ナノチューブになる。次に、このナノチューブは、フェロセン基の酸化によって構成要素であるナノリング間の引力相互作用が弱まり、ナノリングに分割される。相田たちは、このナノリングを基板上に静電的に移動させたり、フェロセン基を還元してナノチューブに再集合させたりできることも示している。