単分子接合:ルールに挑戦するアズレン
Nature Nanotechnology 2014, 614 doi: 10.1038/nnano.2014.121
π共役分子を通る電子の伝導は、場合によっては破壊的量子干渉効果によって抑制されることがある。単分子接合におけるこうした効果の存在は、原子計数モデルに基づくグラフルールによって予測できる。米国、デンマーク、イスラエルのL CamposとL Venkataramanたちは今回、原子計数ルールが、奇数環を少なくとも1つ持つ共役系である非交互炭化水素には当てはまらない可能性があることを示している。
Camposたちは、5員環と7員環が縮合してできた炭化水素であるアズレンを典型的な非交互分子として用いて、金が結合した置換基を用いた2つの金電極の間に置いた。次に、異なる位置で置換された4種のアズレン分子のコンダクタンスを、低い印加電圧に対して測定した。分子の反対端で置換されたアズレンと7員環の反対端で置換されたアズレンは、原子計数モデルで予測されるように、量子干渉を示さなかった。しかし、5員環の1と3の位置の交互炭素が置換されたアズレンと7員環の5と7の位置の交互炭素が置換されたアズレンは、原子計数モデルによればこうした分子は破壊的干渉を示すはずであるにもかかわらず、伝導することが分かった。
Camposたちは、今回の実験結果と計算結果を比較して、アズレンにおけるこうした量子干渉ルールの破れ(他の非交互分子にも共通している可能性がある)を説明している。計算された1,3置換アズレンと5,7置換アズレンの透過曲線は、実は破壊的干渉の特徴を示している。しかし、単純な原子計数ルールから予測されるより高いバイアスで、電荷移動の抑制が起こっている。この効果は、アズレンのフロンティア軌道のエネルギー準位が非対称に配列していることに起因すると考えられる。