Research Highlights
スピン流:ACとDC
Nature Nanotechnology 2014, 614 doi: 10.1038/nnano.2014.122
純スピン流の生成は、反対のスピンを運ぶ電子を反対方向に動かすと実現される。その結果、スピンの正味の流れが生じるが、電荷の流れは生じない。これは、低電力用途に魅力的である。純スピン流は、スピン流を電圧に変換する逆スピンホール効果によって検出できる。しかし、技術的に関連のある物質系では、変換効率が極めて低く、低い電圧しか測定できない。さらに、定常状態のスピンホール電圧は検出されているが、理論では、AC成分も同時に存在すると予想されている。ドイツのG Woltersdorfたちは今回、強磁性体と非磁性金属でできた接合部に、同じ試料のDC成分より10倍大きなACスピンホール電圧を測定した。
Woltersdorfたちは、スピンポンピング、つまり共鳴磁場の印加によるスピン励起を用いて、強磁性体NiFeから非磁性金属Ptへスピン流を注入した。このスピン流のスピン偏極には、時間依存成分と定常成分があり、その両方が相互に直交する方向にスピンホール電圧を生成する。Woltersdorfたちは、この両方の電圧を調べ、AC成分の振幅が6 GHzで120 μVであり、定常スピンホール電圧より12倍大きいことを見いだした。こうした実験に用いられる高周波装置の損失を考慮に入れると、このAC電圧はさらに大きく、最大で400 μVになると見積もられる。こうしたことから、NiFe/Pt接合は、ギガヘルツ周波数の純スピン電流源として有望である。