Research Highlights
自己集合:細胞を捉えるハエジゴク
Nature Nanotechnology 2014, 814 doi: 10.1038/nnano.2014.171
培養細胞や腫瘍や組織は不均一であるため、個々の細胞を捉えて分析するツールは、診断や治療や手術に重要である。単一細胞を分析する手法は数多くあり、極めて精密に粒子や細胞を捉えて操作できるロボット装置もある。しかし、血管などの細い管の中でこうしたことができるツールはほとんどない。今回、ジョンズホプキンス大学(米国)と米国陸軍研究所のD Graciasたちは、部品を動かす外部電池を必要とせずに、単一細胞を捉えることができる自己折り畳み「グリッパー」を報告している。
応力に基づく薄膜の折り畳みに関する先行研究に着想を得て、Graciasたちは、フォトリソグラフィーを用いて、分析的検定に用いたり、細胞を捉える浮遊ツールとして放出したりできるグリッパーのアレイをシリコンウェハー上に作った。このグリッパーは、SiO薄膜とSiO2薄膜でできた柔軟なアーム4本からなり、4本のアームはより厚いSiO膜でできた剛体部分と結合している。この薄膜の厚さを変えれば、希望する折り畳み角度を制御できる。SiO薄膜とSiO2薄膜の圧縮応力の差によって、グリッパーが自力で折り畳まれるのである。グリッパーを付着させた基板に線維芽細胞をピペットで移すと、単一の生細胞をグリッパーのアームの中に捉えることができた。アームの交差部には隙間があるので、栄養素、老廃物、生化学物質の流入と流出が可能になる。さらに、浮遊グリッパーは、ビーグル犬の血液から採取された赤血球を捉えることができた。