Research Highlights
二硫化モリブデンナノ細孔:グラフェンより優れている?
Nature Nanotechnology 2014, 814 doi: 10.1038/nnano.2014.172
膜に開いたナノメートルサイズの孔を用いて、電圧をかけた細孔にDNA分子の一本鎖を通すことによって、迅速かつ安価にDNA配列を決定できる。DNA塩基は、細孔を通るイオン電流の変化を測定するか、横方向トンネル電流を用いて読み取られる。一般的にはこうしたナノ細孔は、窒化シリコンなどの固体材料から作られるか、α–ヘモリシンなどの生物学的ナノ細孔である。最近、グラフェン系デバイスも調べられている。このデバイスでは、グラフェンの厚さが原子レベルであるため、単一塩基分解能が得られる可能性がある。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)のN Aluruたちは今回、MoS2が実際に、ナノ細孔を作る二次元材料のより優れた選択肢である可能性を示唆している。
Aluruたちは、分子動力学シミュレーションを用いて、直径2.3 nmのMoS2ナノ細孔を通る二本鎖DNAの移動を調べた。4種のDNA塩基それぞれで異なるイオン電流信号が観測され、信号対雑音比は約15と算定された。グラフェンと比較すると、算定されたグラフェンナノ細孔の信号対雑音比は約3であった。さらに、このシミュレーションによって、グラフェンでは移動中に塩基がスティックするが、MoS2ナノ細孔にはDNAが付着しないことが示された。Aluruたちは、密度汎関数理論シミュレーションの助けを借りて、MoS2ナノ細孔デバイスを用いて横方向トンネル測定により塩基を検出できる可能性も明らかにしている。