Research Highlights

窒素固定:ナノ粒子でアンモニア合成

Nature Nanotechnology 2014, 914 doi: 10.1038/nnano.2014.203

窒素固定は、空気から得られる窒素を変換してアンモニアを作る触媒的合成で、化学工業において最も重要な反応の1つである。フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによって開発された合成過程は、高温と高圧を必要とする。そのため、この過程は費用がかかり、大量のエネルギーを消費する。従って、常温常圧で働く窒素固定反応を開発する取り組みがなされている。北海道大学の三澤弘明たちは今回、人工アンモニア光合成システムにおいて、可視光照射を用いて室温で窒素固定を行えることを示している。

三澤たちは、片方のチャンバーを酸化反応用とし、もう片方を還元反応用とした、2チャンバー反応器を用いている。酸化反応チャンバーでは、2つのチャンバーのセパレーターともなる半導体材料に担持された金ナノ粒子に可視光が当たる。可視光によって金にプラズモンが励起され、このプラズモンが崩壊して、ホットエレクトロンとホットホールが生成される。次に、このホットホールは、エタノール(今回犠牲還元剤として用いた)を酸化する。還元反応チャンバーでは、膜を通って還元反応チャンバーに移動できるホットエレクトロンと塩酸溶液から得られる水素が、溶存窒素と結合してアンモニアが生成される。

この方法が大規模に利用できるようになるには、さらなる取り組みが必要であろう。しかし、アンモニア合成の量子効率が金のプラズモン共鳴の結果生じるという事実は、プラズモンを介した光化学反応がハーバー・ボッシュ過程の実用的な代替となる可能性を明らかにしている。

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