Research Highlights
ナノチューブ:1つずつ壁を作る
Nature Nanotechnology 2015, 1015 doi: 10.1038/nnano.2015.236
特定の組成、形態、キラリティを持つ管状ナノ構造体のボトムアップ合成は、ナノ科学における未解決の課題である。理化学研究所、東京工業大学、東華大学(中国)の相田卓三、福島孝典、W Jinたちは今回、超分子ナノチューブ類の壁数を制御する合成プロトコルについて報告している。
相田たちは、片側にアルキル鎖を2つ、その反対側にペルフルオロ鎖を2つ付けたヘキサベンゾコロネン分子から合成を始めている。この分子が塩化メチレン中に低濃度で存在すると、自己集合して単一壁管状ナノ構造体ができる。分光分析によって、このナノチューブの壁が2層形態をとることがわかった。つまり、コロネンユニットが、積層してコアに集合体を形成し、アルキル鎖によって結び付いており、ペルフルオロ鎖が、バルク溶媒とナノチューブの内部に向かって放射状に伸びている。
相田たちは、ヘキサコロネン分子の濃度を増すと、二重壁ナノチューブと多重壁ナノチューブが段階的に形成されることを見いだした。意外なことに、より壁数の多いナノチューブへの変化は、コイル状の超分子構造体が親分子の周囲で自己集合する中間形態を経て進行する。相田たちは、ナノチューブを1壁ずつ作れることを利用して、個々の壁を選択的に機能化し、より複雑な機能性ナノ構造体を作製できることも示唆している。