Research Highlights
光クローキング:位相補償のトリック
Nature Nanotechnology 2015, 1115 doi: 10.1038/nnano.2015.269
クロークは、外部の観察者から物体を見えなくするデバイスである。可視光で機能する最初のクロークは、特殊な光学特性を持つ大きなコンテナを用いていたが、コンテナが物体を隠しても、コンテナ自体は観察者から見えていた。カリフォルニア大学バークレー校(米国)のX Zhangたちは今回、厚さ80 nmのメタ表面でできたクローキングの原理実証デバイスを報告している。このデバイスは、どんな形の物体にも巻き付けることができ、巻き付いた物体を波長730 nmの光に対して不可視にする。
この極薄クロークは、物体によって散乱される光の経路を変えて、あたかも光が鏡に反射されているかのように見えるようにする。そうした効果を得るため、Zhangたちは、寸法がサブ波長でサイズが異なる6種の金ナノアンテナで金表面にパターンを作った。このナノアンテナは、散乱光が得た位相シフトを補償できる。位相補償は局所的に生じ、全範囲(0°から360°まで)をカバーするため、縁の鋭い物体をクロークできる可能性がある。さらに、光強度をほぼ維持するために、このメタ表面の総反射率を増大させる誘電体層が加えられた。この設計は、原理的にはスケールアップでき、垂直方向に対する角度が30°以内の入射光に有効である。