Research Highlights
二次元薄膜:プロトンの透過性
Nature Nanotechnology 2015, 115 doi: 10.1038/nnano.2014.328
グラフェンは、厚さが原子レベルで機械的強度が高く、化学的に安定であるため、分離膜の開発において関心が寄せられている。清浄なグラフェンシートは、あらゆる原子や分子を通さないと考えられているが、サブナノメートル大の孔を開けることによって、孔より小さい分子は通すが、孔より大きい分子は通さないフィルターとなる可能性がある。マンチェスター大学、中国科学技術大学、ナイメーヘン大学のM Lozada-HidalgoとH-A Wuたちは今回、プロトンは、清浄なグラフェン単層と、別の二次元材料である六方晶窒化ボロンの単層を透過できるという、燃料電池用の改良型プロトン交換膜の開発にこうした材料を利用できる可能性を示唆する結果を報告している。
Lozada-HidalgoとWuたちは、水の存在下でプロトンを伝導できるナフィオンというポリマーの層の間に挟まれたさまざまな二次元結晶を通るプロトンの輸送を測定した。その結果、グラフェンと六方晶窒化ボロンを通るかなり大きなプロトン流が検出されたが、二硫化モリブデンでは検出されなかった。また、2層と3層の六方晶窒化ボロンでもプロトンの伝導が見いだされたが、2層のグラフェンでは見いだされなかった。こうした観測結果の全ては、さまざまな二次元材料の電子密度分布を考慮することで、理論的に説明できた。さらに、燃料電池でよく用いられている触媒である白金ナノ粒子を、グラフェン膜と六方晶窒化ボロン膜に蒸着すると、プロトン伝導度をかなり向上させることができた。