Research Highlights

摩擦:水の滑りをシミュレートする

Nature Nanotechnology 2015, 115 doi: 10.1038/nnano.2014.330

摩擦は、2つの表面が互いに対して滑り合う時に起こり、小さなスケールでも大きなスケールでも見られる現象である。しかし、摩擦の起源は微視的で、根本的には2つの表面にある原子の相互作用に依存している。さまざまな表面の水の摩擦を解明することは、塩水脱塩や浄水などさまざまな応用の開発に重要である。実験では、原子レベルの必要な情報を得ることが一般的にできないので、シミュレーションを使うことが多い。ロンドン大学ユニバーシティカレッジとリヨン大学のA Michaelidesたちは今回、第一原理分子動力学シミュレーションを用いて、グラフェンと窒化ボロン上の水の層の摩擦を調べ、窒化ボロン上の摩擦係数がグラフェン上より3倍大きいことを見いだしたと報告している。

この2つの表面についてシミュレートした水の層の構造は非常に似ているため、この観測結果は初め、意外なものだった。しかし、さらによく調べると、窒化ボロンでは表面エネルギーがずっと大きくうねっていることが明らかになった。特に、2つの表面の原子構造の上の水分子が最も安定な位置と最も不安定な位置の間のエネルギーの差が計算された。その結果、窒化ボロンでは、このエネルギーの差がグラフェンより2.6倍大きいことが見いだされた。これは、摩擦係数の比率と同程度である。

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