Research Highlights
ナノ医療:ナノワームの防護
Nature Nanotechnology 2015, 1215 doi: 10.1038/nnano.2015.299
人工ナノ粒子には、磁気共鳴イメージングや薬物送達などの生物医学用途に利用できる可能性があるが、血液適合性は一般的に十分でない。このために、ナノ粒子を静脈注射によって投与すると、免疫系に認識され、免疫機構によって数を減らされたりその存在が完全に排除されたりする。コロラド大学(米国)、吉林大学(中国)、コペンハーゲン大学(デンマーク)のD Simbergたちは今回、磁性ナノ粒子を用いて免疫認識機構を調べ、その影響を緩和する方法を見いだしている。
Simbergたちは、血液白血球(病原体の防御に関与していることが分かっている細胞)と、蠕虫のような形をし、デキストラン鎖でコーティングされた超常磁性酸化鉄ナノ粒子(「ナノワーム」と呼ばれる)の相互作用を調べた。その結果、マウスとヒトの血液の白血球によるこうしたナノワームの取り込みは、タンパク質の補体系に依存することが分かった。従って、ナノワームの血液適合性は、補体系阻害剤を用いて向上できる可能性がある。さらにSimbergたちは、ナノワーム表面のデキストランの架橋結合やヒドロゲル化によって、血液適合性を向上できることも見いだしている。