Research Highlights
金ナノ粒子:金属でなくなるところ
Nature Nanotechnology 2015, 215 doi: 10.1038/nnano.2015.16
金ナノ粒子の化学的性質は、そのサイズとともに変化する。特にサイズが小さくなると、その電子構造は、表面の電子が集団的にふるまう金属に特有なものから、離散的なエネルギー準位を持つ分子に特有なものに変化する。しかし厳密にどのサイズで、こうした変化が起こるのだろうか。これを解明するため、ユバスキュラ大学、東京大学、東京理科大学のH Häkkinen、佃達哉、根岸雄一たちは今回、AU~520からAu38という正確な数の原子からなる一連のチオラート保護金クラスターの光吸収スペクトルとX線回折スペクトルを分析した。
Häkkinenたちは、クラスターのサイズが187金原子から144金原子に小さくなると、光吸収スペクトルが、金属に特有の特徴のないプラズモニックバンドから、分子に特有の振電構造を持つバンドに明確に変化することを見いだした。このサイズのあたりで金属的挙動が消失することを確かめるため、144原子以下のクラスターは、もはや金属金に特有の面心立方結晶構造ではなくなることが示された。
さらに、X線スペクトルと密度汎関数理論計算がよく一致するため、Häkkinenたちは、100原子以上のいくつかの金クラスターについて、新しい構造を提案できた。こうしたクラスターは、コア–シェル型の構造で、コアの金原子とシェルの金原子は異なる配置をしていると考えられる。