Research Highlights
非線形ダイナミクス:化学波を制御する
Nature Nanotechnology 2015, 315 doi: 10.1038/nnano.2015.44
シマウマの縞とヒョウの斑点は、非線形生物化学過程の結果生じる自然のパターンの2つの例である。こうした生物学的形態形成を説明するために、さまざまなモデルが提案されているが、実験室内でそのようなパターンを再現できる化学反応のネットワークを設計するのは、まだ困難な課題である。CNRS(フランス)と東京大学のA Estevez-Torresたちは今回、生物学的形態形成を記述するのに標準的に用いられている反応拡散モデルに従ってふるまう、伝播する化学波面を生成できる簡単な実験系を開発した。
この系は、繰り返しユニット2つでできた2倍の長さのテンプレートとハイブリッド形成するDNA鎖からなる。このDNAが繰り返しユニットのどちらか1つとハイブリッド形成すると、酵素によってもう1つのテンプレートユニットの複製が促進され、2:1の複合体が形成される。最後に、別の酵素によってこの複合体が分解される。最終的な結果は、最初のDNA鎖の自己複製である。
Estevez-Torresたちは、この手法を検証するために、細長い反応器を作り、DNA鎖を除く全ての反応物で満たした。この反応器の片側にDNA鎖を付加すると、濃度波が反応器を通って反対側へ伝播した。反応速度と拡散速度を独立して制御できるので、2つの波面が反応器の両端から互いに乱し合うことなく伝播して中間点で交わる、より洗練された実験を設計できた。