フォトニック結晶:間隔を変えて色を変える
Nature Nanotechnology 2015, 415 doi: 10.1038/nnano.2015.81
カメレオンは、色を変えて、カムフラージュ、コミュニケーション、体温調節を行う。この色の変化は、メラノソーム(光吸収色素を含む皮膚にある細胞小器官)の分散と凝集を通して起こると考えられている。しかし、この過程では、ストレスを受けた成熟したパンサーカメレオンの雄に見られる、皮膚の背景色が緑色から黄色やオレンジ色に変わるという大きな色の変化を説明するのは難しい。今回ジュネーブ大学のM Milinkovitchたちは、マダガスカル産のパンサーカメレオンの雄が、皮膚にあるグアニンナノ結晶の間隔を変えて、色を変化させることを示している。
Milinkovitchたちは、組織学と透過型電子顕微鏡法を用いて、他のトカゲとは違って、パンサーカメレオンの皮膚には、2層構造の虹色素胞(光を反射する虹色の細胞)の厚い層があることを見いだした。十分に発達した上層は成熟した雄のみに見られ、グアニンナノ結晶が三角格子に整列してぎっしり詰まった虹色素胞からなっていた。パンサーカメレオンが興奮すると(例えば雄間闘争時)、このナノ結晶間の間隔が増大した。これは、安静時の皮膚の青色や緑色から興奮状態で見られる黄色、オレンジ色、赤色への反射率の変化が、ナノ結晶の配置の変化に起因することを示唆している。興奮した皮膚が高張液にさらされると、結晶格子が縮んで安静時の状態になり、反射率が青色に変化した。これは、皮膚の色の変化が結晶格子の拡大と縮小に起因することを、さらに裏付けている。虹色素胞の下層は、色を変えない。その代わりに、近赤外領域の太陽光を反射するので、この層が熱保護のためのものであることが示唆される。