Research Highlights
分子コンピューティング:論理回路をつなぐ
Nature Nanotechnology 2015, 515 doi: 10.1038/nnano.2015.102
感染症や遺伝的疾患の臨床検査用に、DNAを用いた論理回路と酵素を用いた論理回路を組み合わせれば、疾病マーカーの多様性が大きくなるので有益であり、複雑な生体信号の処理が可能になる。これまで、DNAと酵素を組み合わせたシステムには、ポリメラーゼやエンドヌクレアーゼなどDNAに直接作用する酵素が含まれていたが、こうした酵素は特定の疾病マーカーを検出できない。セントラルフロリダ大学とクラークソン大学のE KatzとD Kolpashchikovたちは今回、酵素回路からの出力信号とDNA計算システムを接続できるインターフェースについて報告している。
Katzたちは、修飾グラファイト電極を2つ用いてインターフェースを作った。第一の電極は、ピロロキノリンキノン(PQQ)が共有結合しているポリエチレンイミン薄膜を持ち、酵素システムと交信する。第二の電極は、Fe3+によって架橋されたアルギン酸塩に捉えられたDNAを持っている。PQQは、酵素システムの出力であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の酸化を触媒して、第二の電極のFe3+を Fe2+に還元するのに十分な負電位を生み出す。この還元によって、アルギン酸塩が分解されてDNAが放出され、DNA計算システムの入力となる。Katzたちは、NADHを生成する2つの異なる酵素システムを用いて、ブール論理ANDゲートとANDゲートに接続されたORゲートを作った。彼らは、この電極インターフェースを通して、こうした酵素回路の出力がDNA ANDゲートの入力となり、がんマーカーの検出に利用できる可能性があることを示している。