Research Highlights

グラフェン:タンパク質センシング用のリボン

Nature Nanotechnology 2015, 915 doi: 10.1038/nnano.2015.209

生体分子の中赤外振動モードはラベルフリー・センシングに利用できるが、光の波長(2~6 μm)が生体分子のサイズ(10 nm以下)よりはるかに長いため、この方法の感度は低い。この基本的な障害を克服する方法の1つは、局在表面プラズモンを用いて、光をナノメートルスケールの体積に閉じ込めることである。しかし、光を金属に閉じ込めると、スペクトルバンド幅が狭くなり、バンド幅は系の形状で決まる。ローザンヌ工科大学(スイス)、バルセロナ光科学研究所、カタルーニャ高等研究所(いずれもスペイン)のH Altugたちは今回、タンパク質の中赤外バイオセンサーとしてグラフェンを用いて、こうした制約の一部を緩和できることを示している。

Altugたちは、シリカ基板の上に幅30 nmのグラフェン・ナノリボンのアレイを作り、このナノリボンをゲート電極に接続した。次に、中赤外レーザー光を照射して、グラフェンのプラズモン共鳴を励起した。バイアス電圧を変えることによってプラズモン共鳴を調節し、プラズモン共鳴とタンパク質の固有振動周波数が重なり合うようにすることができた。このデバイスの上に、タンパク質層を加えると、1,660 cm−1のC=O伸縮モードと1,550 cm−1のN-H曲げモードがグラフェンのプラズモン共鳴と結合した。その結果、消衰スペクトルに明瞭なディップが現れた。グラフェンは金属よりも厳しく光を閉じ込めるため、この方法によって、同じスペクトル範囲で機能する金属デバイスより高い感度も得られる。

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